毎回、1on1で何を話そうか考えるのがしんどい。
やっと質問しても、部下は「特にありません」で終わる。
……ですよね。
先に答えを言います。
話題は用意しなくて大丈夫です。
4つの質問を順番に聞けば、部下の「今の仕事」がそのままテーマになります。
10分あれば、部下とちゃんと対話ができます。
1on1で話すことがないのは、「話題」ではなく「聞く順番」がないから
話すことに困ると、テーマの一覧を用意したくなりますよね。
仕事、キャリア、健康、趣味、最近ハマっていること……。
正直に言うと、一覧を手元に置いても、実際の1on1は1往復で終わりがちです。
たとえば、こんな場面です。
| 上司 | 部下 |
|---|---|
| 最近、仕事はどう? | まあ、順調です。 |
| そうか。何か困ってることある? | 特にないです。 |
| ……そっか。(沈黙) | ……。 |
テーマはちゃんと出しています。
それでも続かない。
原因は、話題の数ではありません。
ネタを用意するほど、上司が話す時間になる
話題を用意すると、準備した上司がしゃべります。
部下は相づちを打つだけ。
「いつも上司が一方的に話して終わってしまう」という1on1は、こうして出来上がります。
「問題を聞く → すぐ対策を言う」で終わる
もうひとつ多いのが、この流れです。
- 部下が「最近、こういうことで困っていて」と話す
- 上司が「それならこうすればいいよ」とすぐ答えを出す
- 部下は「はい」と言うだけ。次に話すことがなくなる
上司としては親切のつもりです。
でも部下からすると、話した瞬間に答えが出て、考える場所がなくなるんです。
そして「話しても結論は上司が決めるんだな」と感じて、だんだん話さなくなります。
上司の仕事は、話題を出すことではありません。
決まった順番で、聞くことです。
順番さえ決まっていれば、その日の話題は「部下がいま抱えている仕事」になります。
上司がネタを探す必要は、なくなります。
10分で終わる1on1の「4つの質問」
順番は、次の4つです。
| 順番 | 質問 | ねらい |
|---|---|---|
| ①現状 | 「今、どうなってる?」 | 部下が気になっている仕事を出してもらう |
| ②理想 | 「どうなってたら理想的?」 | どこに向かいたいかを言葉にする |
| ③ギャップを埋める | 「どうすればそこに行けそう?」 | 部下自身に打ち手を考えてもらう |
| ④最初の一歩(出てきたら) | 「まず何からやってみる?」 | 部下から自然に出てきたら受け止める。無理に決めさせない |
たったこれだけです。
言葉は多少変えて大丈夫。順番だけ守ってください。
会話例:仕事の小さな困りごとが、行動に変わるまで
実際にどう進むのか、たとえばの一般例で見てみましょう。
部下の答えに、上司が一言反応してから、次の質問に進むのがコツです。
| 質問 | 会話 |
|---|---|
| ①現状 |
上司「今、仕事はどうなってる?」 部下「見積もりの作成に、思ったより時間がかかってます。」 上司「あー、そこ時間取られるよね。どのあたりが大変?」 部下「毎回、ゼロから作ってるんです。」 |
| ②理想 |
上司「それは手間だね。どうなってたら理想的かな?」 部下「ひな形があって、数字を入れるだけになってれば……。」 上司「なるほど、それならだいぶラクだね。」 |
| ③ギャップを埋める |
上司「そこに近づくには、どうすればできそう?」 部下「過去の見積もりから、よく使うパターンを集めればいけそうです。」 上司「いいね、それは作れそうだ。」 |
| ④最初の一歩 |
上司「じゃあ、まず何からやってみる?」 部下「今週中に、直近の見積もりを3つ見返して、共通部分を拾います。」 上司「いいね。それ、助かりそうだね。」 |
上司が答えを出したところは、1つもありません。
やったのは、聞くことと、一言返すことだけです。
それでも10分で、部下は自分の仕事について、自分の言葉で話しました。
この例では最後に「やること」まで出てきましたが、出てこなくてもまったく問題ありません。理由は、このあと説明します。
なぜ「現状」から聞くのか
コーチングでは、ゴール(理想)を先に聞くのが定番です。
でも会社の1on1で、いきなり上司に「理想はどうなりたい?」と聞かれたらどうでしょう。
普通の社員は、答えに詰まります。
そして1on1そのものが、ちょっとしたストレスになります。
「今どうなってる?」なら、誰でも答えられます。
だから最初は現状からです。
慣れてきて、部下に負担がなさそうなら、理想から聞いても大丈夫です。
「何からやる?」は、無理に決めなくていい
まじめな上司ほど、「1on1をやったからには、何か成果を出さないと」と思いがちです。
そして最後に「で、何をやるの?」と行動を決めさせたくなります。
でも、これは部下にとってプレッシャーになります。
「宿題を出された」「次回チェックされる」と感じると、1on1は報告の場になり、部下は身構えるようになります。
1on1に慣れないうちは、部下と対話できたこと自体が成果です。
上司も部下も、まずは「話して、聞いてもらえた」という経験を重ねること。
それが、話すことがない1on1から抜け出す、いちばんの近道です。
部下から「じゃあ、これやってみます」と出てきたら、「いいね」と受け止めれば十分です。
出てこなければ、「話してくれてありがとう。また聞かせて」で終えてください。
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「特にありません」と言われたときの返し方
順番を知っていても、本番で止まる瞬間があります。
「最近どう?」に「特にないです」と返されたときです。
ここでやることは、ひとつです。
テーマを部下に探させず、「今の仕事」を聞く。そして、待つ。
「話すことある?」と聞かれると、部下は頭の中で「話すべきテーマ」を探します。
探して見つからないから、「特にないです」になるんです。
聞く側が、探さなくていい質問に変えてあげましょう。
場面別:こう言う
| 部下のひと言 | 返し方(セリフ) | ポイント |
|---|---|---|
| 「特にないです」 | 「そっか。じゃあ、今いちばん時間を使ってる仕事って何?」 | テーマ探しをやめて、①の現状に入る |
| 「理想とか、わかんないっす」 | 「なんとなくでいいよ。どうなってたら、ちょっとラクかな?」 | 答えは出さない。ここで待つ |
| (答えが出ず、沈黙) | (何も言わずに、少し待つ) | 沈黙は、部下が考えている時間 |
「待つ」が、いちばん難しい
沈黙は気まずいですよね。
つい「たとえば売上がこれくらいとかさ」と助け舟を出したくなります。
でも、それをやると部下は考えるのをやめます。
助け舟を出したくなったら、「なんとなくでいいよ」と一言だけ足して、待つ。
考えるのは部下の仕事です。
本当に問題がなさそうなら、早く終えていい
毎回、時間いっぱい話す必要はありません。
現状を聞いて、本当に困りごとが見当たらないなら、こう終えてください。
「そうか、その調子でいこう。何かあったらいつでも言ってね」
これで十分です。
短くても、「ちゃんと気にかけている」という印象は残ります。
無理に30分埋めようとするほうが、よほど部下の負担になります。
「何を聞けばいいか」を毎回考えなくて済むように、順番だけ決めておく。そのためのシートがあります。
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それでも話さないなら、「どうせ言っても無駄」と思っているのかも
順番を守っても、部下が話さないことがあります。
そのときは、部下が「どうせ言っても無駄」と感じている可能性を考えてみてください。
聞いても説教になる。
せっかく考えた意見を否定される。
こういう経験があると、部下は当たり障りのない話しかしなくなります。
「特にありません」は、やる気がないのではなく、そのサインかもしれません。
次の見出しで、その原因になりやすい上司の言動をまとめます。
部下が話さなくなる、上司のNG 3つ
話すことがない1on1の多くは、部下が「話しても仕方ない」と感じています。
つまり上司の返し方を変えると、話は出てきます。
ありがちなNGを3つ、言い換えと並べます。
| NG | こう言ってしまう | こう言い換える |
|---|---|---|
| ①シート埋める係 (1on1のテンプレートやシートを使っているとき)答えを書くだけで、反応せずに次の質問へ |
(黙ってメモして)「次、理想は?」 | 「そうなんだ」「それは大変だったね」と一言返してから、次へ |
| ②答えを先に出す 部下が考える前に、上司が埋めてしまう |
「例えば売上がこれくらいとかさ」 | 「なんとなくでいいから、考えてみて」と待つ |
| ③評価・ジャッジする 面談が人事評価の場になる |
「それじゃ目標に届かないだろ」 | 「そう考えてるんだね」と、まず受け止める |
①シート埋める係:部下は「処理されている」と感じる
会社で用意された1on1のテンプレートや、ネットでよく見かける質問シートを使っている場合に、よく見られるNGです。
質問の順番どおりに聞いているのに、なぜか空気が冷える。
そんなときは、答えに反応しているか、振り返ってみてください。
質問を読む。答えを書く。次の質問を読む。
これを繰り返すと、部下は「機械的に処理されている」と感じます。
「それなら、自分で書くからシートをください」という気持ちになります。
たとえば「今週の達成度は?」「120%でした」と返ってきたとします。
ここで「要因は?」と進まず、「おお、すごいじゃない!」とまず受け止める。
この一言があるだけで、次の答えの深さが変わります。
②答えを先に出す:考える機会を奪っている
「理想とか、わかんないっすよ」
こう言われると、助けたくなりますよね。
でも、ここで上司が例を出すと、部下は「その中から選べばいいのか」と思って終わります。
自分で考える機会が、そこでなくなります。
③評価・ジャッジする:本音が出てこなくなる
部下が目標について話したとき、「それは違うよ」「それじゃ届かないだろ」と返してしまう。
すると部下は、次から「正解っぽいこと」しか言いません。
1on1は評価の場ではありません。
意見が違っていても、まず「そう思ってるんだね」と受け止める。
そのうえで、「じゃあ、どうすれば届きそう?」と次の質問に進みます。
補足:「なぜ?」より「どうすれば?」
ひとつだけ覚えるなら、これです。
| 言いがちな質問 | 言い換え |
|---|---|
| 「なんでクレームになったの?」 | 「これ、どうやって挽回しようか?」 |
| 「数字足りないよ、どうすんの?」 | 「どうすれば目標達成できるかな?」 |
| 「なんでできなかったの?」 | 「どうすればできそう?」 |
「なぜ」は、言い訳を引き出しやすい質問です。
「どうすれば」は、意識を対処策に向けます。
弊社の研修では、「昨日あったよかったことは?」と聞くと場が明るくなり、「悪かったことは?」と聞くと沈みます。
出来事は同じでも、質問で、考えも気持ちも変わるんです。
仕事の話ばかりでいいの?雑談やキャリアは?
「仕事の話だけだと、味気なくないか」と思いますよね。
結論から言うと、最初は仕事の話だけで大丈夫です。
慣れていない上司と部下が、いきなり「将来のキャリアはどう考えてる?」と話しても、答えにくいものです。
どこまで言っていいか、部下が迷います。
仕事の話なら、上司と部下の共通の話題です。
迷わずに話せます。
ただし「指示」でも「評価」でもなく
仕事の話といっても、進捗確認や指示になってはいけません。
大事なのは、仕事のテーマで「あなたはどう考えてる?」を聞くことです。
「どう思ってる?」「どうしたい?」。
上司が決めた方向に引っ張るのではなく、部下の考えを出してもらう。
これが1on1の中心です。
仕事以外の話をしたがったら、そのとき聞けばいい
関係ができてくると、部下のほうから仕事以外の話が出ることがあります。
そのときは、遮らずに聞いてください。
こちらから無理に引き出す必要はありません。
この形が合わない場面
- キャリアの相談や、将来の長期的な話をしたい
- プライベートの悩みも含めて、じっくり話したい
こういう目的には、この記事の形だけでは足りません。
今回の形は、目の前の仕事に絞った、いちばん基本の1on1です。
まずここで、「話せる関係」の土台を作る。
キャリアや深い話は、そのあとで十分です。
まとめ:次の1on1で、まず①だけ聞いてみてください
この記事のポイントです。
- 話題は用意しない。話すことがないのは、聞く順番がないから
- 4つの質問を順番に聞く。①今どうなってる? ②理想は? ③どうすれば? ④まず何から?(④は出てきたらでいい)
- 行動は無理に決めさせない。慣れないうちは、対話できたこと自体が成果
- 「特にありません」には、「今の仕事」を聞いて待つ。問題がなさそうなら早く終えてよい
- NG3つを避ける。シート埋める係、答えを先に出す、ジャッジする
次の1on1では、まず「今、仕事はどうなってる?」だけ聞いてみてください。
そして部下が答えたら、一言返して、待ってみてください。
それだけで、いつもと違う会話になるはずです。
次の1on1から、何を話すか迷わないために
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- シートの順番どおりに聞くだけで、部下が今気になっている仕事の話ができる
- 10分ほどで、部下が自分の考えを話せる対話ができる
- 何を話そうか、事前に悩まなくていい
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